『手紙は憶えている』(てがみはおぼえている、原題: Remember)は、2015年製作のカナダ、ドイツ映画。ホロコーストを題材にしたサスペンス映画。アトム・エゴヤン監督。
感想などをまとめた。
手紙は憶えている のあらすじ
「手紙は憶えている」のあらすじは次の通り。
今年90歳になろうとしているゼブは老人ホームに入所していた。
ゼブは認知症で記憶障害を発症していまい、一度寝てしまうと昨日までの記憶がリセットされてしまう。
妻のルースは一週間前に亡くなったばかりだが、ゼブは睡眠から目覚めると妻が亡くなったこと忘れてしまい、ルースはどこだと?と探し出してしまう始末だった。
同じホームに入所していたマックスから、奥さんが亡くなった日のことを覚えているか?と聞かれるが、ゼブはなにも憶えていないと答える。
マックスは、私が全てメモしているからそれを見れば大丈夫という。
その日の夜、家族とともに妻ルースの葬儀を行っていると、マックスから一通の手紙を渡された。
手紙には…2人が残りの人生でやらなくてはならないことが書かれていた。
ゼブとマックはともにユダヤ人で、70年前の戦争でアウシュビッツに収容されていた。
2人は数少ないアウシュビッツの生き残りだった。
そして、アウシュビッツでナチスドイツによって、2人とも家族を処刑されてしまった悲しい過去を持つ。
手紙には、アウシュビッツで家族を処刑した男ことが書かれ、ルースが亡くなった日に、ゼブは男に復讐する誓いを立てたことが記されていた。
その男は「ルディ・クーランダ」という偽名を名乗り、罪からのがれるためユダヤ人になりすまして、現在ものうのうと暮らしているという。
男の年齢と出身地から、マックスは4人の「ルディ・クーランダ」を特定していた。
そして手紙には4人の男の住所が記載されていた。
マックスは脳梗塞で車いすの生活をしているため、身体を動かせるゼブが代りに復讐を遂げるしかない。
「男の顔を知っているのマックスと自分だけ。自分がやるしかない…」
そう思ったゼブは、妻ルースの葬儀を終えると、さっそく復讐の旅を開始した。
ゼブは老人ホームをこっそりと抜け出し、電車に乗って一人目の「ルディ・クーランダ」のもとへと向かった。
途中で復讐を遂げるための道具として、老人でも扱える拳銃(グロック)を購入してセカンドバックに忍ばせる。
1人目の「ルディ・クーランダ」は、家族と暮らしていて、部屋でテレビを見ながらのんびりと過ごしていた。
ゼブは彼の自宅に訪問し、家族に通されて本人に会うと、いきなり拳銃を向けてアウシュビッツにいたかと問い掛ける。
男は身じろぎひとつせず、当時はたしかにドイツ軍に所属はしていたが、ナチス親衛隊ではなくアウシュビッツには行っていないと答えた。
アウシュビッツのことは知らず、北アフリカでロンメル大佐と共に戦っていただけだと。
彼が差し出した当時の写真と勲章の数々を見て、ゼブは納得した。
1人目の男は人違いだった。
ゼブはホテルに戻り、マックスに一人目は人違いだったことを電話で報告した。
そして、ホテルで眠りにつくと記憶を失っていた…。
ホテルの部屋で目覚めたゼブは、妻ルースを探すが、いるはずもない。
手元にあるマックスの手紙を読んでルースが亡くなったことを理解した。
そして、復讐を遂げるために旅の最中であることも…。
いい加減、妻ルースがなくなったことを忘れないよう、ゼブは腕に油性ペンで妻が亡くなったことをメモ書きする。
2人目の「ルディ・クーランダ」はカナダの老人ホームに入所していた。
ゼブはアメリカとカナダの国境を抜け、男が入所している老人ホームへと向かった。
老人ホームに到着し、男の部屋に行くとベッドに寝た切りとなっていた。
ゼブは拳銃を取り出してアウシュビッツにいたか?と詰め寄る。
男は確かにアウシュビッツにはいた…だが、自分はユダヤ人で同性愛者だったと答えた。
ゼブはとんでもない人違いで、彼は自分と同じ囚人だったのだと理解し、すまなかったと泣きながら男を包容した。
2人目も間違いだった。
そのころ、ゼブの息子チャールズはホームから父親が行方不明になったとの連絡を受けて、必死に捜索していた。
警察にも捜索願を出したが父親は一向にみつからない。
3人目の「ルディ・クーランダ」は郊外の、採石場の近くに住んでいることが分かった。
タクシーで男の自宅へと向かうと、留守でだれもいない。
ゼブは仕方なく男が帰ってくるまで玄関のテラスで待っていると、1台のパトカーがやってきた。
パトカーから降りてきた警官は3人目の「ルディ・クーランダ」の息子だという。
彼が言うには、父は3カ月前に亡くなっているとのことだった。
父親の古い友人だったことを伝えると、息子は快く自宅の中へと案内してくれた。
彼は父親のことをとても尊敬してるようで、父親の遺品をたくさん見せる。
父親が大切にしていた遺品のなかには、ナチスドイツのハーケンクロイツの軍旗や、ヒトラーの著作物も多数あり、生前にヒトラーのことを崇拝していたことが伺えた。
ゼブは息子に、父親はアウシュビッツにいたのかと問い掛ける。
すると彼は、父親はアウシュビッツになど行っていない、父は当時はまだ10歳で軍のコックをしていただけだったと答えた。
全くの人違いにゼブは謝罪し、自宅を後にしようとする。
そのとき、ゼブの腕にユダヤ人の囚人番号が彫られているの見て、息子の態度は一変する。
一体どういうことだ?アウシュビッツに収容されていたユダヤ人がなぜ父に会いに来たのか?
そう言うと彼は激高し、飼っている猛犬を放ってゼブを襲わせた。
命の危険を感じたゼブは、拳銃を取り出して猛犬を撃った。
愛犬を撃たれた息子は怒り狂い、ゼブに銃を向け引き金を引こうとするが、それよりはやくゼブが引き金を引いた。
弾は息子の頭部に命中し、彼は息を引き取った。
人違いで、しかもその息子を撃って、命を奪ってしまったことにゼブは罪悪感にさいなまれる。
精神的に参ったゼブは疲労困ぱいして、その家でそのまま眠りについてしまった。
目が覚めたゼブは、マックスの手紙を読み、ルースが亡くなったこと、そして自分が人を撃って命を奪ってしまったことを理解し、ショックを受ける。
電話でマックスに報告し、人違いで罪のない人を撃ってしまったことを告げると、マックスは「どうする?続けるのか?」と聞く。
ゼブは「ここまで来て、今さら辞めるつもりはない」と答え、4人目の男のもとへと向かった…。
最後の「ルディ・クーランダ」のところへ向かう途中、ゼブは横断歩道で転倒してしまい、そのまま近くの病院に搬送された。
息子チャールズのもとに警察から連絡が入り、急いで病院へと向かった。
ゼブが病院でベッドに横たわっていると、見舞いに来ていた幼い少女が話しかけてきた。
眠ってしまったことで昨日までの記憶を失っていたが、少女がマックスの手紙を代わりに朗読してくれたことで思い出した。
マックスの手紙には、ルースは癌で亡くなったこと、ゼブは認知症で最近のことは全て忘れてしまうこと、共にアウシュビッツの生き残りで、家族を処刑された過去を持つと書かれていた。
そして我々の腕に書かれた囚人番号こそが、アウシュビッツの囚人である証であり、戦争が終わったときに共に復讐をする誓いを立てたことが書かれていた。
手紙のなかで、マックスとゼブは終戦後、長い間会っていなかったが、ゼブが老人ホームに入所した時に70年ぶりに再会したという。
男の顔を知っているのは自分たちだけで、男の本名は「オットー・ワリッシュ」。
ルースが亡くなったときに2人は「オットー・ワリッシュ」に復讐することを誓ったとのことだった。
少女が朗読した手紙の内容を聞き、ぜブは病院を抜け出した。
一方、病院に到着したチャールズは父が病院から抜け出したことを知り後を追った。
4人目の男は湖の近くで家族とともに住んでいることが分かった。
男の自宅に訪問すると、娘と孫の少女が出迎えてくれた。
男はまだ眠っているようで、ゼブは起きるまで待たせてくれと自宅にあがりこむ。
男が起きるまでの間、ゼブは家の中のグランドピアノで得意の「ワグナー」を弾きだした。
すると、ピアノの音を聞きつけ2階から男が降りてきた。
男は「ルディ・クーランダ」だった。
ゼブは声と顔を見た瞬間に、探していた男だとすぐに理解した。
男は「いつか、君がくると思っていた」というと、2人だけで外の庭に出た。
ゼブは男に、君はアウシュビッツの元ブロック長で、私の家族を処刑しただろうと問い詰めると、男は何を言っている?と答えた。
ならば思い出させてやろうといい、ゼブはバックから拳銃を取り出した。
その時、チャールズが駆けつけ、相手の家族とともに庭に出ると、ゼブが銃を男に突きつけていた。
チャールズは父親に「やめろ」と叫ぶがゼブを聞く耳をもたない。
なかなか口を割らない男にゼブは業を煮やし、男の孫の少女に銃口を向け、真実を言わなければ引き金を引くと脅した。
観念した男は真実を語りだした。
自分は実はユダヤ人の囚人じゃなかったこと、そして当時ナチスに所属していて、アウシュビッツのブロック長として、数え切れないほど多くのユダヤ人の命を奪ってきたことを告白した。
男の娘と孫の少女は、祖父の突然の告白にショックを隠しきれない。
そして自分の名は「クイーンベルト・ストーム」だと名乗った。
ゼブは「いや違う、お前はオリー・ワリッシュだろ」というと
男は「何を言っている?君がオリー・ワリッシュだろ?」と言った。
そして腕の囚人番号を見せると、お互いに当時アウシュビッツのブロック長であり、終戦時に罪を逃れるために、2人でユダヤ人になりすまして、腕に囚人番号を刻んだのを忘れたのか?といいながら腕を見せた。
男とゼブの囚人番号は1番違いの連番で刻まれていた…。
ゼブはすべてを思い出した。
ゼブという名は偽名で、自分自身こそがオリー・ワリッシュで、アウシュビッツでマックスの家族を処刑したうちの1人だったのだ。
認知症になったゼブにマックスは近づき、復讐を遂げるために、ゼブに偽物の記憶を情報を与えていたのだった。
すべてを悟り、絶望したゼブは男を撃ち、そして自分の頭に銃口を向け、引き金を引いた…。
ニュースでは事件のことが報道されていた。
老人ホームの人たちは、哀れなゼブと同情するが、マックスは「彼は過去に自分のやったこと理解しただけ」だという。
彼の本名はオリー・ワリッシュで、彼はアウシュビッツで私の家族を処刑したんだよと…。
手紙は憶えている のネタバレと感想
ポイント1
記憶を忘れる人間が、操られて殺人を行うというストーリーは、メメントに似ているが、メメントよりも遙かに簡単で複雑さは無い映画。
また、メメントのような切迫した状況は感じられない。
↓メメントについてはコチラ。
ポイント2
認知症を患っているゼヴ・グットマンが、マックス・ザッカーの手紙によって殺人者を犯すっていう設定だけど、そんなに都合よく認知症のグッドマンが動くかな?
まず、簡単に病院を抜け出せないだろ?
グッドマンは映画の中では、ルディ・コランダー#3の息子である州の警官とルディ・コランダー#4を殺したわけだけど、実際に法の裁きを受ける場合、マックス・ザッカーが主犯と認定されるだろ?
ポイント3
認知症のグッドマンは、4人のルディ・コランダー探しの道中、危なっかしい事ばっかりやる。
アメリカからカナダの国境を越える際に、パスポートが切れているんだけど、免許証で許してもらえて渡航OKに?そんなことあるか?
また、スーパーマーケットでは警報ブザーが鳴り、ピストルが入ったカバンを開けられてしまうことに。ここも警備員から大目に見てもらえる。
普通は警察に通報するだろ?
ポイント4
この映画の最大のオチは、最後にルディ・コランダー#4に指摘されて、初めてグッドマン自信が実はアウシュビッツのブロック長であり、オリー・ワリッシュであることに気付くこと。
認知症のグッドマンが、そんな都合のよく思い出したり忘れたりするだろうか??
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